こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。

もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。

前回の記事(参考⇒空き家不動産の判断基準、相続放棄するか相続して売却すべきか?)では、空き家相続発生後の相続放棄についての判断基準について解説しました。

ここで解説するのは、相続により空き家になった不動産の処分に関して、その相続人が、一定要件のもとで売却することができた場合に、その譲渡所得から3000万円を控除することができるについての制度です。

これは国としても、増加し続ける空き家を減らしていこうという趣旨のもとで作られた政策なので、利用可能な状態なのであれば是非活用していただきたいところです。

ただその条件内容が少し厳しいため、ご利用の前にはご確認いただくことが必要です。

一応、本記事にそれらの制度要件を提示していきますが…、かなり分かりにくく難しい表現になっているため、ご利用の際には専門家の関与のもと適用要件を満たしているのか確認をしてもらうことをお勧めします。

※一応、本記事で実務書や規定書の通りに内容を全部記載しますが、難しく読みにくいなら飛ばしていただいて、下の方に、要約のみ記載した部分を掲載していますので、そこだけ読んでいただくでも十分です。

1.相続不動産を売却時の譲渡所得税

まず相続した不動産を売却時に発生する譲渡所得税について説明します。

もしも不動産を売却して譲渡益が発生すると、所有した保有期間(短期か長期)に応じた税率で譲渡所得税が課税されます。

空き家不動産の相続時にこれを当てはめて考えてみると、この場合は被相続人の所有期間も引き継ぐことになるため、ほとんどの場合において5年以上の長期譲渡が該当することになるでしょうから、この場合は、譲渡益に対して約20%の税金が課税されることになります。

例:3000万円の譲渡益が出た場合⇒600万円の納税が必要

しかし、ここで説明する相続した空き家の特別控除が適用できれば、譲渡所得の金額から3000万円までの控除が可能になりますので、600万円の税金を0円にすることが可能です。

2.特別控除のための要件

まず、ざっくりと要件の述べると…、

相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、特定の期間内に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することがでるという制度です。

要件に対しての捉え方として、その相続不動産そのものの物件的要件な要件と、適用可否を判断する適用上要件(状況の上での要件)という2つを満たしておく必要があります。(参照:国税庁被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

2-1.物件的要件について

(1) 被相続人居住用家屋であること。

(1) 被相続人居住用家屋であることとは?⇒相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件全てに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限る。)を指す。
 

  • イ  昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  • ロ  区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  • ハ  相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

(2) 被相続人居住用家屋の敷地等であること。

被相続人居住用家屋の敷地等とは?⇒相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利を指す。

※土地を複数相続族する場合⇒相続の開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地である場合。

その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限る。

2-2.適用上要件について

(1) 売った人が、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

(2) 次のイ又はロの売却をしたこと。

イ  相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

※被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。

  • (イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
  • (ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。ロ  相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

※被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)及び(ハ)の要件に当てはまることが必要です。 

  • (イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
  • (ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
  • (ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

(3) 相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(4) 売却代金が1億円以下であること。

(5) 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

(6) 同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。

(7) 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

特別の関係とは、生計を一にする親族、内縁関係者、入居施設先であった特別関係のある法人なども含まれます。

3.特別控除適用のための手続きについて

この空き家の譲渡所得税3000万円の特例の適用を受けるためには、次に掲げる場合の区分に応じて、次に掲げる各種書類を添付して、確定申告をすることが必要です。

(1) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合

イ  譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕

ロ  売った資産の登記事項証明書等で次の3つの事項を明らかにするもの

  •  (イ) 売った人が被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を被相続人から相続又は遺贈により取得したこと。
  •  (ロ) 被相続人居住用家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  •  (ハ) 被相続人居住用家屋が区分所有建物登記がされている建物でないこと。

ハ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」

※ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の2つの事項を確認した旨を記載した書類をいいます。

  •  (イ) 相続の開始の直前において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
  • (ロ) 被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等が相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。


ニ 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し

ホ 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの

(2) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合

イ  上記(1)のイ、ロ及びホに掲げる書類
ロ  売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」

※ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の3つの事項を確認した旨を記載した書類をいいます。

 (イ) 相続の開始の直前において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

(ロ) 被相続人居住用家屋が相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

 (ハ)被相続人居住用家屋の敷地等が次の2つの要件を満たすこと。 A  相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。 B  取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

4.非常にわかりにくいので要件を易しく書くと…。

ここまで、一応は実務書等の通り要件を書き連ねてみましたが、いかがでしょうか?

一応、税務署などに行けば、ある程度は教えてもらえる内容ではあるのですが、それでも空き家の特別控除の要件は非常にわかりにくく、読み込んだり、人から話を聞いても、内容を理解するのは一苦労だと思います。

ただ、ここまでは、たいがいの司法書士や税理士さんのサイトにも書かれていることなので、ここからもっと分かりやすく要点に絞って説明していきます。

正直にいうと、もの凄くざっくりと書いていますので、正確に言えば間違いではるのですが、まずは相続財産調査の初手で自分の相続不動産が適用するか否かの判断基準程度にはなるかと思います。

大前提⇒被相続人が一人で居住してた物件が、相続によって空き家になった状態であること。

  •  相続で取得した相続人が…、
  •  昭和56年5月31日以前に建てられた戸建住宅を…、
  • 相続発生から3年以内に、
  •  売却価格は1億円以下で、
  •  親族など特別な関係者以外の第三者に対して、

5.実務的には建物解体が必須である。

事実上、この特別控除を使うためには建物を解体して更地にしてから売却することがほぼ必要にになります。

あくまでも上記に記載してきた法律上の話であれば、 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書を取得できるほどの耐震基準さえ満たすことができれば建物解体まですることなく特別控除を使うことができるのですが…、

現実問題として 昭和56年以前に建てられたような建物に耐震基準を付与させるなど無理な話です。

さらに不動産を受け入れる買主側としても、古い建物自体には利用価値を見出せないことが多く、更地として土地のみの経済価値を入手したいと考えることが多いです。

そのために、上記の簡易条件に加えて、実務的には、ほとんどの物件において、建物解体後に売却するということが、空き家の特別控除を適用させるために必要条件と考えていいでしょう。

6.特別控除を使う売却には各種専門家の連携が必要

特別控除の要件を満たした上で、どういった手順で空き家売却を進めていくかは各種専門家の協力が必要になってきます。

適用要件が厳しく非常に細かいので、相続開始から売却にむけて、各種専門家が連携して適用に向けて準備を進めていくことになるからです。

実際に関係してくる専門家は下記のようになります。

※建物解体費用については非常に高額な経費負担(150~300万円程度)になります。多くの業者さんとしても、作業開始前に半分を支払い、解体が終わった時点で残り半分を支払ことが多いため、費用負担の面で相続人への大きな負担になることがあります。

  • (1)司法書士…相続不動産の名義変更や、遺産分割協議などの相続手続きを担当。また、換価分割にかかる代理まで業とすることができますので、空き家を司法書士が取りまとめて売却まで代理することが可能です。
  • (2)税理士…「相続税」と空き家の3000万円にかかる「譲渡所得税」という2つの税務申告を担当。この特別控除の適用要件の可否については必ず税理士へ相談しながら進めていくことになります。
  • (3)建物解体業者(建物内部の遺品整理)…特別控除を使うためには空き家の建物解体が必要となりますので、解体業者へ依頼をしなければいけません。また通常は建物解体が伴うときは、内部の残置物撤去もまとめて対応してくれる場合が多いです。
  • (4)土地家屋調査士…続けて更地売却になることがほとんどである為、土地の測量が必要になります。また同時に、建物解体をすれば建物登記の滅失登記まで必要となりますので、土地家屋調査士へ測量と滅失登記を依頼がセットになります。
  • (5)不動産業者…売却が前提となりますので、空き家の買い手を探してくれる不動産業者へ依頼は必須です。また、特別控除が要求される特殊な相続物件を売却をする場合は、相続物件の取扱いに慣れた不動産業者へ依頼をすべきです。

このように空き家の3000万円特別控除を適用させるためには、多方面の知識や経験が必要になります。要件の漏れがあっては適用ができなくなってしまうからです。

また、厄介なことに各担当業者のそれぞれについても、適用のために要求すべきポイントあります。

例えば、建物解体業者には解体する前後や過程について写真を撮ってもらう必要があります。産廃業者の中にも、この点を存じておらず、解体工程の写真を撮らないまま作業を完了させてしまう業者がいるので、依頼当初より、しっかりと念を押して空き家の特別控除を適用させることが必要です。

また、税理士さんへも、この特別控除の申告ために書類準備をしていただくことになるのですが、単なる相続税の申告等とは区別して、空き家の売却に関する特別控除を利用する旨を明確に伝える必要があります。

まとめ

空き家を売却するとなると相当の経費負担が発生します。

特に上記に説明した通り、特に大きな出費になる建物解体作業がほぼ必ず伴ってきます。

これに測量費用や司法書士の登記費用、残置物撤去費用まで合わせると相当な経費となってしまいますが、思った以上に様々な業種、専門家へ依頼をしないといけないことが分かったと思います。

これらの各業種を一つ一つ探して手配していかなければいけませんので、とても手間がかかる作業になり、相続人の中で誰が一旦立て替えるのか、といった問題も出てくることが予想できます。

もしも相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン 相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。

なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。

枚方市・交野市・寝屋川市の皆さんへ、相続・遺言・遺産分割のまとめ情報

CONTACT

お問い合わせ

初回のご相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
事前のご予約いただければ夜間・土日の無料相談も承っております。