こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
前回は遺言書の話題を持ちかける前段階として、まずはご自分で遺言書を作成してみましょうというおはなしでした。
親に遺言書の話を持ちかけたときのよくある返答に、どう対処すればよいのかをご紹介しましょう。
【誤解・勘違い 1】円満な我が家に遺言書は必要ない
親の多くは、「遺言書は家庭や親族の間に揉め事を抱えている人が残すもの」と考えています。そのため、自分たちが人並みに円満な家庭だと思っている親は、子供が遺言の話をすると「とくに揉め事があるわけでもないし、我が家に遺言書は必要ないだろう。私が死んだら後は家族でうまくやってくれ」と言ったりします。
でも、親が亡くなったときのことを想像してみてください。現在、あなたの家庭が円満で兄弟の仲もとくに問題ないのは、親が存命であることが、家族をしっかりと束ねているからではないでしょうか。そう考えると、親が亡くなった途端に以前は口にできなかったことを兄弟姉妹たちが言いだして、家族が一気にバラバラになってしまうリスクが潜んでいます。これは、親の存在感が大きいほど可能性が高くなります。もし家族がバラバラになりそうなときでも、親が遺言書を残していれば、亡くなった親に代わって家族を束ねてくれるのです。
親に「円滑な我が家に、遺言書は必要ない」と言われてしまったら次のように親に伝えてみましょう。
「兄弟仲がいいのは、お父さん(お母さん)が家族をまとめてくれているおかげだよ。もし、お父さん(お母さん)がいなくなってしまったら、ひょっとしたら相続がきっかけで、今までどおりに仲良くお盆や正月に兄弟が実家に集まるようなこともなくなってしまうかもしれない。お父さん(お母さん)の築いた家族が、これから先もずっと仲良く過ごせるためにも、遺言を考えてくれないかな。遺言書はお父さん(お母さん)が亡くなった後でも僕たちを束ねてくれるはずだよ。」
遺言書を残した人は、肉体的にはこの世から消滅してしまっても、法的には生きていると言ってよいのです。
最近では、子供と話し合って、親子双方が満足できる遺言書を残そうとする親も増えていています。このような事前協議型の遺言には、親が自ら子供に話を持ちかけるパターンもあれば、子供から親に話を持ちかけるパターンもあります。共通しているのは、「今までの良好な家族関係を、これから先も続けていきたい」という願いです。 遺言書について親と話すときには、まず、家族の“要”としての存在感を親に意識してもらいましょう。
【誤解・勘違い 2】遺言書は金持ちが残すもの
「私にはたいした財産がないから、子どもたちがモメるようなことはありませんよ。遺言なんて大袈裟ですよ」といって、遺言は無縁のものだと考えている親も珍しくありません。
司法統計(最高裁判所事務局がとりまとめている裁判所が取り扱う事件の統計)によると、平成22年度に全国の家庭裁判所に持ち込まれた遺産分けのモメごとで、話し合いでまとまった総数は8015件です。そのうち、遺産の額が1000万円以下のものが2479件で、全体の約3割を占めています。
1000万円は決して少ない金額とはいえません。しかし、特別に大きな数字を占めているのです。その、1000万円以下の遺産で相続のモメごとの3割もの数字を占めているのです。遺産の額が少なくても、相続トラブルがあることを示しています。
遺産の額が少なくてもモメる原因として、不景気による所得の減少があります。長引く不況により、家計が苦しい現役世代が増えています。そうしたなか、親の相続の話が出てきたら、遺産の額など関係なしに、「もらえるものは少しでも多くもらいたい」と子供が考えるのは無理もない話です。
また、親の相続の話が出るとき、すなわち親が死亡するときはちょうど子ども世帯がお金を必要とする時期に当たります。住宅ローンの返済や教育費など、なにかとお金がかかる時期ということもあるでしょう。
高度経済成長を経験してきた親世代では、仮に長男が親の遺産を多く引き継いでも、「親の遺産をあてにしなくても自分は何とかやっていけるし、親の面倒をみてくれた兄貴に親の遺産をあげよう」といった具合に相続でモメるような事例はあまりありませんでした。しかし今では、「親の面倒をみてくれた兄貴には感謝している。だけど、それと親の遺産分けは別の話。こちらにも色々と事情があるし、貰えるものは、少しでも多くもらっておこう」となってしまうのです。
このような感覚の違いは、親世代ではなかなか理解ができないのかもしれません。もし、親が「遺言は金持ちのもの」と考えていて遺言書を残さないのであれば、今の時代では、財産が少なくても相続トラブルは起きていることを伝えましょう。
まとめ
今回の記事を参考にしていただいて、ご家族で遺言書について話し合われる方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、自分で法的に有効な遺言書作成を実施することが難しい場合や、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。