こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
前回の記事(参考⇒相続放棄も難しい相続と空き家問題の関係について。)では、空き家が発生する原因となっている「相続」の部分から 空き家が発生していく背景について解説しました。
実際に空き家を相続した場合、大きく分けて相続して“売却“するか、それとも、相続をせずに“相続放棄”するというこの2つを選ぶことになります。
売却を選択した場合、仮に建物自体が相当築年数が経過していて財産的な価値がなくとも、解体して更地で売却することでお金を残すことができます。
しかしその反面で、建物内の遺物処理や建物解体の費用、引渡し前の測量費用など売却には売主側で果たさなければならない準備に費用が掛かります。
その為に、売却できても赤字になるケースもあります。
また、そもそも買い手のつかないような土地だと売却することもできません。
この場合は毎年の固定資産税や管理費用だけが発生して、手放すこともできない状態になる可能性もあります。
このように、もしも空き家を相続した場合は、そこからの相続人の人生にとって、大きな影響を及ぼす可能性があります。
この相続時の判断は、絶対に誤りたくないものです。
【本記事の内容】
- 1.空き家を相続の前の判断基準について。
- 2.相続損益の判断は、相続財産価値と管理責任の全体像を見て決めるべき
- 2-1.まずは不動産の価格調査から。
- 2-2.もう一歩踏み込んで買取査定をしてもらう
- 3.空家管理責任を負うくらいなら、多少の赤字は覚悟してでも売却・処分をする
- 4.査定などで検討していると相続放棄が間に合わないの?
1.空き家を相続の前の判断基準について。
判断基準と言ってもそれ自体は難しい話ではありません。
要は、不動産を相続して“利益になる”ならば相続すればいいわけで、それが“利益にならない”ならば相続放棄を選択すればいいだけです。
しかし問題は、相続においては“何が自分にとっての利益になる?”が非常に難しい場合があります。
当然、大阪市内や地方でも駅などが近い物件であれば、空き家を相続することで不利益にになる可能性は低いでしょう。
仮に被相続人に多少の借金等があっても、土地を一定額で売却すれば、問題にならなことが多いでしょう。
問題は、土地の価値が低くく、売れるかどうかわからない相続物件である場合です。
売却困難な不動産(土地)を相続してしまった場合、ずっとその問題の空き家を持ち続けなければいけませんので、お金だけでなく管理上の負担も大きいでしょう。
2.相続損益の判断は、相続財産価値と管理責任の全体像を見て決めるべき
相続が自分にとってどのような損益をもたらすかについては、空き家の存在だけで考えることは出来ません。
まず相続財産の全体を見て決める必要があります。
そもそも論、仮に相続放棄をした場合は、被相続人の財産全てを相続することができなくなります。
例えば、不要な不動産だけ相続放棄して、預貯金のみを相続するということは不可能です。
つまり相続放棄については、相続財産の全てを「相続する」か、相続財産の全てを「放棄する」か選ぶしかないです。
相続財産が不動産しかないというケースでも、資産価値の高い宅地だけ相続して、使い道のない農地や山林については放棄したいと考える人もいるかもしれませんが、それもできません。
結局、相続した被相続人の財産の全体像を調べてから、相続するか相続放棄するかを決めるしかないことになります。
2-1.まずは不動産の価格調査から。
もし売却ができるかどうか分からないなら、早い段階で不動産業者から査定を出しておいてもらうべきでしょう。
この時点で、安くても売却処分が可能なら相続をすればいいと思います。
しかし、査定はあくまでも売却が成立した場合を仮定した上での金額です。
その為、不動産屋から情報を得たとしても、それが絶対に売却できるかどうかというレベルまで話が担保されていないことには注意をすべきです。
2-2.もう一歩踏み込んで買取査定をしてもらう
上記に紹介した一般的な査定は、あくまでも不動産屋さんが仲介という立場で査定をした「売却査定」の事を指します。
意味合いとしては、不動産屋が探してきてくれた個人を相手に買主を探した場合を想定してもらう形になります。
しかしそうではなく、相続放棄すら考えざるを得ない状況であれば、不動産業者に対してもう一歩踏み込んで、「買取査定」をしてもらった方が、より確実な情報収集になるかと思います。
理由としっては、売却査定に関しては、不動産屋はあくまで仲介の立場でしかないので、売れるかどうか確実性は少なくなるのですが、この点、買取査定であれば、その業者が買主当事者として、確実に買える額(もしくは買取できないならできない事実も)を提示してくれるので、情報の確実性がより高いものになります。
もし、買取査定までお願いした上で、不動産業者に「ウチで買い取るのは無理」という回答まで受けたのなら、それは本当に売れない不動産ということが分かります
不動産屋自身が入手して、その後に利用や売却可能であれば、安くても不動産屋なら買取価格を提示してきますので、それすら無理であればこそ売却困難だと判断されると考えられます。
なお、どういった不動産業者にお願いしていいか分からないようであれば、当事務所の取引先からご紹介して買取査定を出してもらうことも可能です。
3.空家管理責任を負うくらいなら、多少の赤字は覚悟してでも売却・処分をする
相続放棄を検討中の場合は、是非、空家の管理責任まで考慮してください。
ここでは割愛しますが(参照⇒相続放棄をしても、相続不動産の管理責任からは逃げられない。)、相続放棄をしても空き家の管理責任は残ります。
しかも、責任だけは残りますがプラスの財産まで放棄するので取返しが付きません。
相続放棄をしてしまった以上、空き家を処分することができない上に、自費で管理責任を負い続けなければいけなくなります。(固定資産税の納入や管理の外部委託、修繕費用などへも被相続人の預貯金等が利用できなくなる為。)
その為に総合的に考えると、それらの責任を負い続けるくらいなら、あえて相続を受け入れた上で、赤字覚悟でも処分してしまった方がいいという考え方もあります。
特に、そのような負動産を持ち続け次の世代へ迷惑を先送りするぐらいなら、破格でも処分を優先するほうが良策に適うことになるでしょう。
実際に、すでに今現在でも、タダどころか、むしろ、お金を払ってでも不動産を手放したいとまで考えている空き家所有者は山のようにいます。(※この場合は、売却ではなく贈与になります。)
もしもまだ、不動産が低廉な価格でも売却できるのなら、早めに空き家を相続して処分するという方法を検討してみてはいかがでしょう?
実際に、弊所の対応のお客様の中にも、早期の不動産の手離れを目的に売却活動のご依頼を頂くケースはかなり多いです。
4.査定などで検討していると相続放棄が間に合わないの?
相続放棄は基本的に相続が始まってから3ヶ月以内にしなければいけません。
そのために、相続開始の初動でモタモタしていたら、不動産の相続をして売却すべきか、最初から相続放棄するべきか検討している間に、申述期間に間に合わなくなってしまう場合があります。
もしもそのような場合が懸念される場合には、相続放棄の期間伸長の申し立てを検討しましょう。
また、結果的に相続放棄をしたいとなった場合において、既に3ヶ月の期間が経過をしてしまったとしても、絶対的に相続放棄が認められなくなるわけではないので、その場合であっても諦める必要はありません。
まとめ
今回ご説明させていただきましたように、相続した空き家や土地の取扱いは非常に厄介です。
後先考えずに相続放棄をしてしまった結果、管理責任だけが残ってしまい、以後、長期にわたって空き家に悩まされる危険がでてきます。
状況によっては対応策があるかもしれませんので、相続によって不動産を相続された方は、お早めに当事務所までご相談ください。
もしも相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン 相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。