こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、相続が開始後、相続財産に不動産があるなら、不動産の名義変更として相続登記を申請をしなければなりません。
この相続登記申請ですが、多くの方が“とりあえず”という形で、残った親とご兄弟(姉妹)の共有名義で申請がされていることが多いです。
実は、相続に限らず、不動産の所有者名義が共有になることは様々なリスクがあります。
そのリスクについて、特に不動産を相続する方は必ず知っておきたいことです。
今回は相続時に、不動産を共有で登記してしまうことの危険性について説明します。
目次【本記事の内容】
- 1.不動産を共有で相続する法定相続
- 1-1.法定相続と遺産分割について概略
- 2.法定相続分割合で不動産を共有名義にしたデメリット
- 2-1.共有状態によって売却できないリスク
- 2-2.一度、共有になると共有者が際限なく増える
- 3.とりあえず法定相続は危険
1.不動産を共有で相続する法定相続
まず、基本というか相続のおさらいの部分です。
これまでの記事でも解説してきましたが、相続が開始すると、相続人は被相続人の財産を承継することになります。
もしも、相続人が1人の場合だったとすれば、これは別段、相続が複雑になることはまずあり得ません。
これに対して相続人が複数人いる場合は、民法で相続する割合が決められています。
1-1.法定相続と遺産分割について概略
第1順位 | 配偶者・子 | 2分の1・2分の1 |
第2順位 | 配偶者・親(直系尊属) | 3分の2・3分の1 |
第2順位 | 配偶者・兄弟姉妹 | 4分の3・4分の1 |
この法定相続が問題になるのは、不動産の場合だと、預貯金のようなお金と違い、物理的にその物体そのものの持分を分割することができないからです。(※土地だけなら分筆により2分以上にすることは可能ですが、不動産価値が著しく下がります。)
つまり。不動産を法定相続分の割合で相続すると、不動産そのものを物理的に分割できないために、相続人全員で不動産の権利的に共有することになり、登記の表記上も共有持分として反映されます。
そして、相続人間で話し合った結果、法定相続分とは違った方法で相続することが決まれば、特定の相続人が単独で相続したり、法定相続分とは違った割合で相続することも可能です(※遺産分割協議、詳しくは⇒相続財産が不動産のみの場合、3つの遺産分割方法について。)。
つまり、法律上、相続で何もしなければ法定相続になり、先を見据えて相続内鵜に手を加えた相続が遺産分割相続になります。
実見的には、圧倒的に遺産分割協議を加えて相続を完結することのほうが多いです。
2.法定相続分割合で不動産を共有名義にしたデメリット
先に結論から申し上げますと、法定相続分の割合でそのまま不動産を相続することは、とてもデメリットの多い相続方法です。
あるいは、本記事のタイトルの通り、デメリットどころか危険性と表現してもよろしいでしょう。
- 「法定相続分は民法で規定されているから、それに従った方が良いんじゃないか?」
- 「相続について家族間で揉めたくないし、法定相続分から先どうするか考えたくない。」
実際問題、このように考えられる方は非常に多いです。
預金のような分割することが容易な財産についてはそのまま法定相続分の割合で相続してしまっても問題はありません。
しかし、不動産の相続については何の考慮も無いまま法定相続分の割合で相続を終えるのはリスクがあります。
そのリスクとは何なのか?
ズバリ、“不動産が共有状態にある”この一点に尽きます。
2-1.共有状態によって売却できないリスク
①売却時の意思の統一が難しい
もしも、共有不動産の所有者の1人がせめて自分だけの持分を売却したくなった場合、一応は、その持分のみを売却することは可能です。
しかしながら、現実的には本来の市場価格とかなりかけ離れたような、低価格でしか売却することはできません。
もしも、持分だけとはいえ、本来の不動産の価値に見合った価格で売却金を得たいなら、やはり共有者全員で売却してから、その後、持ち分に応じて売価を分配するなどする必要があります。。
つまり結局は、売却を進めるには、共有者全員の意思(売却する)の一致が必要となります。
そして、相続人全員が、買主に対する売却価格で折り合いがつかないと、売買契約を締結することすらことができません。
②圧倒的に手間が増える
不動産の売却時には、上記の相続人同士での売却価格の決定だけで話が終わるワケではありません。
不動産業者との媒介契約に始まり、その後、土地家屋調査士への測量の依頼、不動産売買契約締結、売主の印鑑証明書と不動産権利証を引き渡す決済、売却代金の着金確認、不動産譲渡所得税の申告など、様々な手続きを行わなければなりません。
これら手続きについては、共有者全員で行う必要があるものもあり、その都度全員が出席し、全員で対応となると、ほぼ間違いなく話はスムーズに進みません。
もし、共有者の中に、1人でも遠方にお住まいの方がいると、何度も遠方から訪れることになり負担になります。
仮に、売買契約など、共有者間で代表者として代理してもらえる手続きがあったとしても、代表者の負担が増えるだけでなく、そこに何か相続人同士での伝達ミスや認識の違いが発生したことで、売却前に、相続の紛争が発生することも多いです。
③認知症発症者が出たら、間違い無くデッドロックになる。
さらに、相続不動産の共有で問題になりやすいのが、共有者の“意思能力“の問題です。
とくに、父親の不動産を高齢の母親と共に相続した場合に懸念されます。
相続をする際にはしっかり意思表示が出来ていたが、売却のときには認知症の症状が発生・悪化し、売却の意思表示できなくなってしまうような場合です。
端的に言うと、共有者の一人が“認知症”にかかってしまい、自分の意思を表示できなくなってしまえば、売買契約を結ぶことすらできません。
仮に形式上、代理人等の形で売買契約が締結されても、その売買契約は無効となります。
こうなると売却することはできなくなり、対策としては売却の為に青年後見人の選任する方法しかなくなります。
そしてたとえ後見人がついたとしても、売却できるかどうかは後見人の判断と家庭裁判所の審判に委ねることになってしまいます。
2-2.一度、共有になると共有者が際限なく増える
二次相続、三次相続の発生
特にご相談として多いのが、一度、共有者になった方からの相続による、さらなる不動産の権利関係の複雑化です。
最初の相続で、相続人が法定相続分による共有状態で相続し、その後、さらに共有者相続人に相続が発生し、共有持分が細分化さらにされ、どんどん共有者が増えてしまっている不動産についてのご相談がかなり多いです。
例えば被相続人がAで、相続人がB、Cだけ場合に売却をするなら売主はBとCだけで済みます。
しかし、ここで放置している期間の間に、Cに相続が発生してしまうと、Cの相続人に子供や妻などのD、Eが登場してしまいます。
そのために、売却の当事者になるのは、B、D、Eとなるわけです。(DとEも共有者になるから。)
1.被相続人A⇒相続人B、C
2.Cに相続が発生⇒B、D、E
上記の例は、まだシンプルで話し合いも行いやすいですが、現実で問題となっている事例では、最初は数人だった共有者が、数十人まで膨れ上がってしまい、売却の話し合いをすることも困難になってしまった事例もあります。
共有者が増加すればするほど、親族の関係性も薄くなるため話し合いがより困難になるからです。
相続にほとんどアカの他人まで混ざってくる
実際問題、相続も三次相続以上まで進んでしまうと、親族同士とはいえ、ほとんと連絡すら取ったことが無い、他人同然同士の関係であるというご親族様は非常に多いです。
そして、共有者に第三者が入ってくると、話し合いは一気に難しくなります。
共有者において相続が複数回発生すると、その順序によっては血の繋がらない関係の共有者も登場してくるからです。
共有者の中の親族が誰かに持分を譲渡してしまい、第三者が共有関係に入ってきてしまうこともあります。
いずれにせよ、時間の経過とともに、共有者間の話し合いは難しくなります。
3.とりあえず法定相続は危険
不動産登記は、一度、申請を完了してしまうと、やり直しすることは非常に難しいです。
そのため相続が発生した段階、今後、相続不動産をどうしていきたいか? 相続の初手で明確にしておかなければなりません。
相続が開始した際に、相続人の間で方向性が決まっているのであれば、その内容に従って手続きを行えばよいかと思います。
しかし、何も決まっていないのに、“とりあえず”の感覚で、法定相続分で登記申請をしてしまうことだけは避けるべきです。
ここまで説明してきたように、不動産を共有で所有することのデメリットが非常に大きいからです。
共有化することで今後どのような問題が発生するのか、自分達だけではそのリスクは見えにくいと思いますので、やはり司法書士等の専門家にご相談いただくべきだと思います。
仮に、共有状態で所持していただくにしても、一通りのリスクを承知いただいた上で登記手続きをしてもらったほうがいいからです。(どのように相談を進めたらいいか?詳しくは⇒不動産相続をお任せサポート)
4.まとめ
相続した不動産の名義を誰にすべきか?
これは、一番に相続人の皆様の気持ちを最優先にすべきだと思います。
ですが、実務的な側面を考慮せずに名義変更をしてしまったことで、後々になって手が付けられなくなる危険性があります。
相続した不動産の名義は、一度変えてしまったら基本的に元に戻すことはできませんので、相続手続きを開始される前に、是非、当事務所までご相談ください。
名義変更後の将来的な不動産処置まで考えて、アドバイスさせていただきます。
⇒不動産相続 相続登記お任せプラン 相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。
枚方市・交野市・寝屋川市の皆さんへ、相続・遺言・遺産分割のまとめ情報