こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、遺産分割協議では法定相続人同士が相続財産をどのように分けるのかについて話し合いをします。
このとき、高額な財産の相続内容を決める場合、その話し合いの判断材料となってくる相続財産の評価方法がとても重要な情報となります。
その中でも、遺産分割協議を行う上で最も難しく、かつ相続人間で話し合いがまとまりにくいのが、“不動産価格の決め方”です。
今回は、この点について詳しく解説をしていきたいと思います。
1.相続不動産の価格の決め方
実際問題としては、相続財産がどの程度の金銭的価値をもつかについては、考える必要の無い場合のほうが多いです。
例えば、相続財産が現金、預貯金である場合は、それそのものが金額なので、考える必要はありません。
証券会社口座で管理されている株式でなども、それが基本的に、上場株式であることが多く、これも銘柄の価格を確認することができるため、これも、株式価格の基準日を決めさえすれば話し合いが可能です。
そう、相続財産の評価で価格について、一番困るのが「不動産の価値」なのです。
考え方としても、不動産は条件が似ているもの(分譲地など)はあれど、全く同じものは存在しません。
この点でも、遺産分割の対象となる不動産の価格の算出方法について、相続人の頭を悩ませることになります。
そして、単純に、不動産は相続財産の中で最も高額な部類の財産であり、しかも物理的に分けて管理することが出来ない点でも、判断が難しくなる理由になっています。
2.不動産の評価方法で相続人間の意見が割れる場合
遺産分割協議で価格の評価が難しい不動産は、その評価の方法で、相続人間で意見が割れることが非常に多いです。
問題になるポイントは下記の様になります。
不動産を相続しない相続人からすると、不動産評価は高い価格の方が良く、不動産を相続する相続人からすれば、不動産評価は低い方が良いからです。
例えば、2人で対等な割合で相続財産を相続する方針となった場合で考えてみましょう。
不動産を相続しない相続人Aは不動産評価が高くなればなるほど、自身が相続する他の財産が増加します。
逆に不動産を相続する相続人Bは不動産評価が低くなるほど、自身が相続する他の財産が増加します。
《参考事例》
- 相続財産:不動産と預金500万円
- 相続内容:2分の1ずつ
- 遺産分割:相続人Aは不動産、相続人B
上記の場合で、不動産評価も500万円と仮定した場合、Aは預金を相続することはできずBが預金をすべて相続する形で対等分割になります。
逆に、不動産評価が300万円であった場合は、Aは不動産だけでなく、預金も100万円相続し、Bの預金相続額を400万円に減らさないと対等分割になりません。
不動産をどのように評価するかに応じて、各相続人の取り分に このような変化が起きますので、遺産分割の際の不動産評価方法は、相続人にとって重要なります。
例えば、相続不動産に誰も住まない場合等であれば、さっさと換価分割して実売金を平等に分けることも可能なのですが…、
相続人の中の誰がか、まだ、その不動産を生活に利用しなくてはならない場合などで意見が食い違いが発生すると、この不動産の評価方法で揉めたりします。
3.相続不動産算定方法の基本的な考え方
このように、遺産分割で相続分に影響を及ぼす不動産価格の算定方法ですが…、
難しい問題でありながら、遺産分割協議における、不動産の相続価値の算定方法を定めた法律はありません。(※不動産以外の財産も同じ。)
つまり、遺産分割協議時の不動産評価については協議当事者である法定相続人同士が話し合って決定するしかありません。
冒頭のように、不動産も他の財産のように、簡単かつ明確な基準があればいいのですが、それができない点に不動産相続の難しさがあります。
4. 3つの相続不動産の算定方法
では?
この点、具体的に、相続実務では、どのような方法で、相続不動産の価格算定を行っているのか?
実は、一般的な価格算定の方法は存在するので、ここでは、それらの3つの方法について説明します。
①時価算定(市場価格)または業者査定
まず考えられるのは時価(市場価格)です。言い換えれば、不動産を実際に売却した時の価格です。
しかし、実務的には、遺産分割協議の前に不動産の売却を実施することは、ほぼ不可能なので、実務的には殆どこの考え方は使えません。(そもそも遺産分割協議が終わっていない以上、相続登記ができず、売却が出来ないため。)
何より、この時価評価の方法では、さらに大きな問題点があります。
それは、実際に売却してみないと金額が分からないことです。
特に、土地や戸建ての場合、 売却前には正確な価格をに出すことは難しいです。(マンションなら、地域、床面積、階数などの不動産価値についてのデータが揃っているので、まだマシ。)
特に、複数の不動産業者に見積もりを出すと、それぞれ価格が違うのが当然になります。 (しかも、実際に売れる成約金額よりも高値の査定額が出てしまう傾向が多く、トラブルの原因になります。)
結果、どの業者に査定を頼むかで揉め事に発展するので、売却査定を遺産分割時の不動産価格とするのは正直無理があります。というか、絶対に辞めましょう。⇒詳細:遺産分割協議と不動産査定の関係について。売却一括査定サイトを使用するリスク。
この点、メリットのある場合は、上記とは逆の状況の場合です。
相続人同士で相続物件売却の意向が固まっており、業者の選定で全く意見の相違がないの場合であれば、換価分割が可能なので、査定金額と実売価格の誤差まで、ご納得されているご家族様であれば問題はありません。
②路線価
次は、路線価を使って遺産分割時の不動産評価額の算定根拠にする方法です。
路線価とは何であるか?については、国税庁が相続税評価の基準に使用するために発表している土地の価格です。」(※建物は含みません。)
相続財産の規模的に、ご家族の基礎控除を超える場合に、税理士事務所と連動する際に、算出することが多いのです。
国が決めてくれている価格なので、一見、妥当性があるように思えますが、実はデメリットもあります。
まず、上記のように、基本的には土地に対する評価額なので、マンションの場合、路線価算定は非常に使いにくいです。
また、単純に路線価が出ていない地域も存在します。
さらに、路線価はあくまで整形地として仮定されて金額ですから、現況を確認していない地方の不動産では使いにくく、実際の売却時の価値とも異なるので、これをそのままダイレクトに遺産分割協議時の不動産価格にしていいのかというと難しいです。
あくまでも、相続税の課税評価としての判断基準であるに、止めたほうがいいかもしれません。
③固定資産税評価額と割戻し
一番利用されるケースが多いものとして、こちらの固定資産税評価額を算定根拠にする方法はお勧めです。
この固定資産税評価額とは、 “ 地方自治体(市町村)が固定資産税を計算する際に基準とする地方自治体が独自に出した不動産の価格”の事です。
固定資産税評価額は、全ての不動産に対して価格が算出されていますので、マンションや戸建てを問わず、普遍的に利用することが可能です。
ただし、この 固定資産税評価額も、時価(実際の売値)よりも安い金額で評価されていることが多いので、その金額で相続人全員が納得できるのかがポイントになります。
完全に、不動産価値をフォローしているワケではありませんが、上記の2つの方法に比べて、比較的、欠点が少ない点が挙げられます。
なお、一般論として不動産価格は、時価算定 > 路線価 > 固定資産税評価額の順に金額が安くなっていきます。
そして、この点が問題になるのであれば、家庭裁判での調停・審判時のように、 固定資産税評価額÷0.7の割戻しを加えて、補正する方法もあります。
例) 固定資産税評価額 700万円÷0.7(7割割戻し)=1000万円
5.実務上の遺産分割時の不動産価格の決め方
さて、遺産分割協議のときにおける、不動産価値の算定方法について、しょうかいしてきましたが、実は、一番重要なポイント一つだけです。
相続人間で話し合いができる場合であるか否かです。
通常の相続の場合
そして単純に、相続人同士で揉め事もなく、遺産分割について話し合いができる状況にあるご家族であれあば、上記の「固定資産税評価額」を基準にして不動産を算定されるケースが一番多いです。
固定資産税評価額をそのまま不動産の価格にすれば時価よりも安く算定されますが、実際には、これが問題になるケースは殆どありません。
何故なら、換価してお金に換えることが不動産相続人の目的ではないことが多く、その不動産に住み続けるという事自体が目的であることが多いからです。
下手に、居住不動産を手放してしまい、家賃出費がある状態で生活することと比べてたら、実売価格より不動産評価額が低いことなど、取るに足らないレベルの問題だからです。
結果的、殆どの相続人に納得していただく形で協議が成立する形になります。
紛争が発生した(しそうな)ご家族の場合
逆に、相続人間で話し合いがうまくできない(仲が良くない)状況の方は、まず、この時点で、 不動産価値の算定方法含め、ご家族の何が問題になっているのか、整理し直す必要があります。
特に、思いつきで『不動産名義変更なんて簡単だろう。』と、安易な財産分割案を提示してしまったり…、
上記のように遺産分割の際に不動産屋を介入させるタイミングを間違えてしまったご家族が、不動産の評価方法で話し合いがもつれてしまった場合は、もう長期戦を覚悟しなければいけなくなります。
相続人にとって何も良い結果にはなりませんし、何よりご家族の気持ちに敵意と不満を残すことになってしまいます。
最悪の場合、裁判に発展します。
なので、何とか相続人それぞれにとっての妥協点を見つけ、話し合いを進めえてもらうしかないです。
なお、もし万が一、当事者だけでは遺産分割が成立できないようなレベルに達した場合は、早期に弁護士へご相談されることをお勧めします。
お金を掛けたくないからと、全て自分で解決しようとする人ほど、傷口を拡大させる事が非常に多いです。
まとめ
今回は、遺産分割協議と不動産価値について、お話させていただきました。
実際にも、不動産の評価については、相続人間で考え方が違う場合もそうですし、各相続人ごとの知識の差によって、紛争に発展することがよくあります。
このように、不動産評価は相続する財産の価格に大きな影響を与えるため、その評価方法についても被相続人ご本人が生きているうちから、ある程度の対策をしておく必要があります。
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