こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。

もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。

さて、これまでの記事では、相続が発生した場合に、どのように相続手続きが進んでいくか概括的に説明してきました。

ここでは少し具体的な事例を設定して、相続不動産の名義を決めていくのかを解説してみたいと思います。

まず、相続が発生した不動産の、次の名義をどのように決定していくかに関しては、一般的に考えると現在住んでいる人の名義にすれば良いと考えるのが第1の選択肢にはなると思います。

しかし、状況によっては実際にいま住んでいる方以外の相続人への登記名義にする余地が出てきます。

ここでは、相続した実家の名義を誰にすべきかという事例で解説をしてみます。

目次【本記事の内容】

1.父親の相続で母親と子供が遺族となるパターンで検討。

司法書士の実務として、個人的には経験上も、一番多いといいますか、最も典型的な事例として、被相続人が父親で、相続人が母親と子供となるケースです。

このうち子供(兄弟姉妹)がさらに複数人である場合も多いですが、とにかく、先に父親が死亡して、母親とその子供が相続人となる事例はやはり多いです。

このような状況だと、主に父親と母親が相続の対象不動産(実家)に住んでいたという場合が多いでしょう。

そして、父親が死亡した場合には、一人残された母親の名義に、不動産の登記名義を変更をしたいと考えるのが大多数になるかと思います。

イメージ感としては、「親父との思い出もあるだろうし、実家はお袋のものでいいよね。」といった感じでしょうか?

恐らく、特に他の考えなければ、子供側としても、このような考え方に従って母親名義に登記を申請をすることになるでしょう。

しかし、本当に他に考慮するべき点は無いものでしょうか?

確かに、実際に住んでいる母親の名義に変更するのが、最も実態に即していている考え方だとは思います。

しかし、ここで単純に母親に名義変更をしてしまうことで、将来的に別の大きな問題が生じてしまう可能性があることを知っていただきたいのです。

2.母親名義にすることで生じる3つの懸念

ここでは、すぐに母親名義にしてしまうことで生じる問題をまとめてみました。

この点の問題点をよく確認してみたうえで、ご実家の名義変更をどのようするか、是非、検討してみて下さい。

2-1.母親が認知症になった場合は、実家を売却できなくなる。

まず、実家を母親名義にしたあとに、数年後、母親の認知能力が衰えてきて認知症になった場合を想定したほうがいいでしょう。

ご親族の誰かが、長期的に、母親を介護できる場合はいいのですが、そうでないければ母親を施設に入れる必要が出てきます。

結果、その資金に充てるため、実家を売却しようと考える子供も出てくるでしょう。

しかし、ここで初めて事の問題に突き当たります。

認知症になった母親は意思表示ができないために、実家を売却することができません。

また、法律上、子供が勝手に母親の代理人として名乗り出て、実家を売却することもできません。

恐らく、このような状況まで、父親の相続手続き時には、想定もしなかった方も多いでしょう。

しかし、いざ、売却を検討する段階になって、ご子息たちがお困りになられているというケースは、実際問題として非常に多いです。

また、介護現場の実情としても、父親の相続のときには、元気であった母親が、ご主人が亡くなった以降は、面倒を見たり、話しをする相手がいなくなった結果として、認知症が進むケースは非常に多いです。

あまり、想像したくはないご家族様の将来像ですが、残された母親が認知症になってしまうリスクも想定すべきです。

【この場合の解決策】

将来的な売却と、母親の介護まで視野に入れた、相続手続きを進める場合は、相続の初手の段階で、不動産の名義は子供にしておくほうが良いでしょう。

すぐに、売却する意図はなくても、将来的な選択肢を残しておくことにつながります。

2-2.二次相続の相続税が高額になるケースが懸念される。

二次相続という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、端的に説明すると、父親の相続が済んだあとに、次の親族の相続が発生する状況の事です。

今回の事例で考えてみると、年齢的に、父親の相続が済んだ後は、恐らく母親の相続に備える必要が出てきます。

この場合に母親名義の不動産が残っていることを想定すれば、相続税が高くなる可能性が懸念されます。

幾つかの理由があるのですが、今回の場合においての事情を1点ずつ解説します。

・まず、第一に父親の時よりも相続人が1人減るわけですから相続税の非課税枠も少なくなります。

・次に、二次相続のときには、当然、先に配偶者である父親が亡くなってるため、配偶者控除が使えなくなっています。

・さらに、子供達が全員実家を出てしまっている場合には、小規模宅地等の特例も使えません。

そのために…、

結果的に、二次相続のときには、相続税額が高額になってくるケースがどうしても発生してきす。

つまり、税金の面においても、将来的な対策を考慮せずに、実家の名義を母親にしてしまった場合だと、二次相続が発生したときに、実家も相続財産に含まれてしまうことになります。

そのために、残った子供たちが払う相続税が、非常に高額になってしまう問題が出てくることになります。

【この場合の解決策】

まず、不動産を含めた、ご両親の資産の額がどの程度なのか、個別の状況を精査する必要があります。

そのうえで、最初の相続の時点で、どの程度の相続税を想定しておくのか、税理士も交え、二次相続時までの遺産分割を検討し、相続税対策も進めておくことが望ましいでしょう。

2-3.必然的に相続登記が2回発生する。

もう、これは上記の2点の問題がどうであれ、必ず発生してしまいます。

父親から母親に名義変更して場合になると、その母親の相続が発生した場合に、次の相続手続きとして、母親から子供への、相続登記を申請することになってしまいます。

単純に、同じ相続登記を2回やらなければならないので、2回分の司法書士報酬と登録免許税が発生します。(本人申請で登記をしても、登録免許税は必ず発生します。)

この点は、単純に考えて、いずれ子供への相続が発生するならば、ダイレクトに子供へ名義変更をするほうが、1回の相続登記で済ませることができるので、合理的な考え方といえます。

3.登記はやり直しが難しい

さて、前項までで、相続登記の最初の時点で、母親の名義にしてしまった場合の懸念点をいくつか紹介しました。

しかし、最初の登記で失敗してしまっても、あとから直したり、簡単に違った部分だけを変更すればいいんじゃないか?という意見もいただくのですが、実は、一度完了した登記を、その後の実情に合わせて、やり直すのは難しいのが実情です。

例えば、相続手続きが完了した後の登記名義人である母親を、失敗や間違いを理由に、そっくりそのまま息子や娘に訂正してしまう、などといった事が出来ません。

この場合だと、母親と息子の間に、“売買“ “相続“ “贈与”などといったように、きちんとした法律上の“事実と原因”があって、別の登記申請を登録免許税とともに支払って申請する他、手段がない形になります。

そのために、最初の相続手続きの中で、慎重に、次の登記名義人を決定していくのが、良策であると言えます。

4.相続手続きは総合的な観点で検討したほうがいい。

今回は、あくまでも、登記申請という一面に限った範囲で、事例を検証してみました。

特に、紹介した事例にしても、主立って子供側の目線による注意点として書いているので、実際には、母親側の立場も尊重されなければなりません。

最終的に、相続した不動産の名義を誰にするのかについては、必ずしも一律的な答えはないのが難しい部分です。

そのために、例えば…、

・相続税が発生する規模の資産のご家庭であれば、二次相続の対策を検討する。

・が発生した時点で、すぐに売却を検討している。

・あるいは、親の認知症対策も兼ねて検討を進めたいなど。

手続き上の優先事項が何になるのか?

将来的な家族像がどういったものにしていきたいのか?など。

当事務所としても、そういった観点から、相続した実家の名義変更について、一緒にご相談を進めさせていただきます。

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