こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
前回は、親に遺言書の話を持ちかけたときのよくある誤解を解く方法についてでした。今回は、実際に遺言書を作成するときに気をつけて欲しいことをご紹介いたします。
遺言書の残し方のルール
法律では、「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない」(民法960条)と定めています。これは、遺言書の残し方は法律できちんとルールが決められていて、“ルール違反の遺言書”は法的に認められないということす。“ルール違反の遺言書”は、「自筆証書遺言(自分で書いて残す遺言のこと)」で多く見られます。
よくあるルール違反には、次に掲げた5つがあります。この中で、とくに注意が必要なのは③と⑤です。

現在、一般的な契約書は、文章をパソコンで作成して、契約する当事者が署名・押印をする形式が一般的です。そのため、遺言書の文章もパソコンで作成し、プリントアウトした書面に署名・押印すれば大丈夫だろうと思っている人もいますが、このような文書では法的に遺言書とは認められません。法律では、「自筆証書遺言によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、それに印を押さなければならない」(民法968条1項)と定めています。したがって、親が自筆証書遺言を残す場合は、これらの条件をすべてクリアしなければなりません。たとえ子どもでも、親の遺言書を代筆することは法的に認められません。一部でも代筆した場合は自筆証書遺言とは認められません。
また、最近では夫婦一緒に遺言書を残す人も増えています。なかには、同じ紙に2人で書いて“遺言書”を残そうとする仲の良いご夫婦もいらっしゃいます。しかし、法律では「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない」(民法975条)としています。これを「共同遺言の禁止」といいますが、同じ紙に夫婦が書いた“遺言書”は共同遺言となるので法的に遺言書とは認められません。
せっかく遺言書を家族の為に残しても、法的に無効な遺言書だった場合、遺言の有効・無効について兄弟姉妹が争うことも考えられます。かえって遺言書を残さなかったほうがましだったということにもなりかねません。親が遺言書を残しているようなときには、法律で定められたルールに基づいているかチェックしてあげるとよいでしょう。
遺言書には余計なことを書かない
遺言に関する本や講演会で、遺言に「付言(ふげん)」を記すことを積極的にすすめる動きがあります。付言とは、遺言を残すことに至った経緯や家族への思いを、遺言の中に付け加えた文章のことをいいます。
親が残す付言の内容として多いのは、「妻と子供たちのおかげで充実した人生を送ることができて満足な人生であった」などのように、妻(または夫)や子どもたちへの感謝の言葉です。
なかには、「長男○○の悪行の後始末で苦労させられた。こんな奴は子どもとは思っていない。よって私の財産は1円たりとも渡さない」のように、特定の家族への不平不満を遺言に残す親もいます。遺言に不平不満を書かれた子どもは、実際に親不孝をしたのかもしれません。しかし、親から遺言に不平不満を名指しされた子どもは逆切れするおそれがあります。
そして、遺言によって遺産を多くもらう人に対して、「この遺言は、お前にそそのかされて親が残したものだ。こんな遺言は無効だ!」などと言いがかりをつけ、遺言書の内容がスムーズに実現できないケースもあります。
もし、親が不平不満を遺言書に記したいと言ったら、付言のデメリットについて説明して、できればやめさせたほうが無難です。説得したにも関わらず、「それでは気が済まない!」というようであれば、遺言とは別に手紙で気持ちを残すようにすすめてみてください。
遺言によって、ゼロまたは他の兄弟より少ない相続となる兄弟が不平不満を言い出したら、そのときに親が思いを記した手紙を見せればよいのです。
遺言書はあくまでも法律文書で、気持ちを残すものではありません。この点を十分認識するように親に伝えましょう。もし、付言を残すなら、妻(または夫)や子どもへの感謝の言葉などを残す程度にとどめましょう。特定の子どもに対する不平不満のような余計なことを遺言書に残すと争いの元になるので十分注意しましょう。
まとめ
今回の記事を参考にしていただいて、実際に遺言書作成される方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、自分で法的に有効な遺言書作成を実施することが難しい場合や、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。