こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
前回は遺言書を残すことに前向きにならない親へのアプローチ方法についてのおはなしでした。今回は遺言書作成に取り掛かるタイミングについてご説明します。
遺言書に取り掛かるタイミング
遺言書とは、自分の死後、どの財産を誰にどれだけ残すのかを自分で考えて決めて、文書に残すものです。簡単そうに思えるかもしれませんが、遺言書を残す当事者としては、図のような段階を経て、じっくりと遺言書を残すことになります。

時間をかけて残した遺言書ですが、一度残したとしても、事情が変われば新たに何度でも作り直すことができます。そのため、「気が変わったら作り直せばいいし、気軽に遺言書残しておいてよ」と親に言う人もいます。
たしかに、遺言書は作り直すことができるので「気軽に残そう」というアドバイスは間違いではありません。しかし、先ほど示したように、遺言書を残すまでには、①自分の死を想定し、②所有している財産を把握し、③その財産をどう残したら一番いいのかあれこれ思い悩み、④決めたこと法律のルールにのっとって文書に残すという過程があります。遺言書を残すまでに、親は子どもの想像以上に肉体的・精神的な負担を感じているものなので、遺言書は親が心身ともに健康な時でないと残すのが一苦労になってしまいます。
そこで法律でも、遺言者は、遺言をする時において一定の能力(「遺言能力」)を有しなければならない(民法963条)と定めています。裏返せば、遺言能力が欠如すると親は遺言書を残すことができないということになります。
また、親が病気になって肉体的・精神的に弱ってしまったときに、必要に迫られて子どもが親に「遺言を残してくれ」と伝えるのは、親子ともども、とても辛いことです。
遺言書はいつでも残せるものではありませんが、だからといって親に急がせてはいけません。大切なのは、ふだんから親とコミュニケーションをとって、親の肉体的・精神的な状態に気を配ることです。高齢の親が認知症などになって遺言能力が欠如してしまうことも考えられますから、頃よいタイミングを見計らって、きっかけをつかむのが重要です。“ゆっくり急ぐ”感覚を持って、親に遺言書を残すように働きかけましょう。
まずは、自分が率先して遺言書を書いてみる
実は、遺言書は15歳に達すれば残すことができます(民法961条)。今のあなたの年齢で遺言書を残すことは、なんの問題もありません。そこで、親に遺言書を残してもらうきっかけづくりとして、まずはあなた自身が遺言書を書いてみるのも1つの手です。
遺言書を残すには、先ほどの図で示したように、まずは自分の死を想定することから始まります。そして、自分の財産を把握し、財産を誰にどれだけ残したいのかを決めます。そして、この決断がはたして家族にとってよいことなのか、あれこれと考えをめぐらすことになります。このステップは親も同じですから、自分が遺言書を書いてみると、親の気持ちを身をもって理解できるでしょう。この経験は、とても貴重なものになります。子どもが自分で遺言書を残すことを実体験することで、具体的には次のようなメリットがあります。
①親に自分の経験から遺言書を語ることができる
自分で遺言書を書く経験をしてみると、遺言を残す前の気持ちと、残した後の気持ちの変化に気づくことになります。遺言書を残す前はあらためて意識したことがなかった自分の死について考えることで、今生きていることに感謝の気持ちが出てくる人もいます。また、自分が亡くなった後に残される家族のことを想像して、いっそう家族を大切に思う人もいます。なかには、自分の財産を把握することで、もっとお金を貯めようとして決意して仕事や貯蓄に励むようになった人もいます。
このように遺言書を残すことで感じることは人それぞれです。あなたが遺言書を残したら、その感想を素直に親に伝えてみましょう。親も興味を持って聞いてくれるはずです。
②親に遺言書をすすめる言葉に説得力が加わる
いくら本やセミナーで学んだことを親に伝えても、通り一遍の説明では親はなかなか納得してくれないケースが多いかもしれません。ところが、遺言書を残したあなたの言葉には「体験者としての説得力」が加わります。
いざ遺言書を書こうとすると、あれこれと気持ちが揺れたり、土地や建物の表示を正確に書くことの難しさや、銀行の口座番号を記載するときにうっかり間違えてしまったなどの経験をするはずです。もっと簡単に書けると思っていたのに、実際に書面に残すとなると意外と苦労することがわかるでしょう。こうしたリアルな実体験を親に話せば、あなたの具体的な話の内容に引き込まれるはずです。

まとめ
今回の記事を参考にしていただいて、ご家族で遺言書について話し合われる方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、自分で法的に有効な遺言書作成を実施することが難しい場合や、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。