こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
前回は自宅売却のときに活用できる特別控除のお話でした。今回は相続した空き家を売却するときに活用できる”空き家特例”についてご説明します。
相続空き家の特例の概要
空き家(故人の自宅)を相続した相続人が、耐震リフォームをするか、その家屋を取り壊した後にその物件を売却した場合には、その売却にかかる譲渡所得(儲け)の金額から3000万円を特別控除できます。3000万円に20.315%をかけると約600万円です。約600万円分の節税になりおますので、これは大きいです。
この特例は、例えば、相続人である長男と次男が共有で土地を相続し、売却した場合には、1人につき最大3000万円の控除があるため、2人であれば6000万円まで控除されます。使えるか使えないかで非常に大きく手取りが変わります。
適用要件
①昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
②区分所有登記されている建物(分譲マンションなど)でないこと。
③相続開始の直前において故人以外に居住をしていた人がいなかったこと(つまり、故人が1人暮らしをしていたこと)。
④相続のときから譲渡のときまで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと。
⑤売却代金が1億円以下であること。
ポイント解説!
売却することが前提である空き家に、耐震リフォームをする方は少ないため、実務上は家屋を取り壊して敷地のみを売却するケースが多いです。
適用時期
本特例は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件となります。
ただし、期間限定の特例であるため、令和9年12月31日が最後の期限となっています。
※今後、法改正等により期限が延長される可能性もあります。
ポイント解説!
期限までに売却(引き渡し)していることが原則ですが、引き渡しが期限後であっても、売買契約の締結日が期限前で一定の要件を満たしていれば適用が可能です。
遺産分割の注意点
この特例を使うためには、遺産の分け方に注意が必要です。大事なポイントは、故人の空き家を相続する際は、家屋とその敷地をセットで相続しなければいけない点です。
パターン1(NG)
二次相続(※)のタイミングで、長男が家屋を単独で取得して取り壊し、敷地は長男と次男で2分の1ずつの共有とした場合はどうでしょう。次男は家屋とその敷地をセットで取得しておらず、要件を満たさないため適用外となります。長男はOKです。
※夫婦のどちらか一方が亡くなることを一次相続といい、その後に残された方が亡くなることを二次相続といいます。
パターン2(NG)
一次相続のタイミングで長男が家屋を相続し、二次相続のタイミングで長男が敷地を相続した場合はどうでしょう。長男は家屋と敷地をセットで取得していないため要件を満たさずNGとなります。
パターン3(OK)
一次相続のタイミングで配偶者と長男が家屋と敷地を2分の1ずつ相続し、二次相続のタイミングで長男が家屋と敷地の残り2分の1を相続した場合はどうでしょう。長男は家屋と敷地をセットで取得しているため要件を満たしています。共有状態であっても、母の持分2分の1の家屋と敷地をセットで取得しているためOKです。
引渡し時の注意点
この特例を使うための要件の1つに、「売主が家屋の取壊しをしてから買主に引き渡すこと」というものがあります。間違っても買主が取り壊すような売買契約を締結してはいけません。不動産の譲渡では取壊し費用の負担について調整することがありますが、空き家特例においては、売主が取壊し費用を負担して引渡し前に更地にすることが求められます。
令和元年度税制改正のポイント
これまでは、相続開始の直前まで、故人が家屋に居住していた場合のみが適用対象でしたが、相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた場合も、一定要件を満たせば適用対象となります。
まとめ
今回の記事を参考にしていただいて、相続した空き家の売却手続に取り掛かる方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、お時間等が無く、自分で手続きを実施することが難しい場合や、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。