こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。

もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。

今回は相続した不動産を売却した場合の税金の考え方を解説します。この時の最大のポイントは、売却金額と比較する購入金額は、相続したときの価格ではなく、故人が買ってきた当時の金額を採用する点です。

 例えば、父が30年前に5000万円で買った土地を、子供が相続して(そのときの時価8000万円)、その後に子供が8000万円で売却したとします。この場合、譲渡所得の金額は8000万円から5000万円を引いた3000万円になります。

 この取り扱いは、先祖代々から引き継がれている不動産でも同じです。先祖が買ったときの金額を使って譲渡所得を計算しなければいけないのです。終戦前後の時代では、今と比べると、非常に低い金額で取引されていました。そのため、先祖代々から持っているような土地の場合には、売った金額のほとんどが譲渡所得となるため、多額の所得税と住民税が発生します。

当時の不動産購入価格がわからなくなった場合

 皆さんは、ご両親が現在住んでいる不動産を、ご両親がいくらで購入したか、おわかりになりますか?「なんとなくはわかりますが、正確にはちょっと・・・」という方がほとんどだと思います。

 ただ、故人が購入した金額がわからないと、譲渡所得の計算ができません。その場合、非常に厳しい5%ルールが適用されます。

 これは、購入金額がわからなくなってしまった場合には「売った金額の5%を購入金額とみなして譲渡所得の計算をしなければいけない」というルールです。

●父から相続した不動産が1億円で売却できた

●購入当時、父がいくらの値段でこの不動産を買ったのか完全にわからない。

 この場合、売却した金額1億円の5%にあたる500万円が購入金額と扱われます。その結果、 1億円から500万円を引いた9500万円が譲渡所得になり、ここに20.315%の税金がかかりますので、2000万円弱の税金を払わなければいけません!

 皆さんから 「父はそんな安い金額で買ったはずはない。」という声が聞こえてきそうですが、残念ながら国が定めたルールなので仕方ありません。

 購入時の契約書などが残っていれば過去に購入したときの金額がわかるのですが、捨ててしまうと金額を明確にすることはなかなかできません。なお権利証には通常、購入金額は書かれていませんので、権利証だけあっても購入金額を明らかにすることは難しいです。このような事態にならないようにするためにも、不動産をいくらで購入したかは、必ずわかるようにしておかないといけません。

 なお、合理的に過去の購入金額を算出し、その金額を税務署に納得させられることができれば、その金額を購入金額として申告することも認められます。例えば、購入した不動産会社が今もあるなら、購入当時のチラシやパンフレットを探してもらうのも1つの手です。登記簿謄本の抵当権の欄で、購入時にいくらのローンを組んでいたのかがわかるので、そこから推測していく方法もあります。

 いずれにしても、税務署を納得させるには、かなりの理論武装が必要になります。これまで、この手の相談に対応してきた実績のある不動産鑑定士であれば、過去の購入金額を合理的に算出することが可能です。ただ、最終的に税務署にそれを認めさせられるかどうかは確定申告書を提出する税理士の腕次第になります。相続や不動産売却(この分野のことを業界用語で「資産税」といいます)に強い税理士に相談しましょう。

相続した財産は3年10か月以内に売ると節税できる

 相続税を納めた人が、被相続人が亡くなった日から3年10か月以内に相続財産を売却した場合には、「取得費加算の特例」という所得税の特例を使うことができます。この特例はその名の通り、取得費(過去に購入したときの金額)にあるものを加算してくれるのです。取得費が増えれば、その分、譲渡所得も減りますので、支払う所得税を減らすことができます。

 それでは一体、何が加算されるか。それは相続税です。相続人が納めた相続税のうち、売却したものに対応する部分の相続税を取得費に加算することができるのです。

実例解説:1億円の相続税を納めたら?

 例えば、4億円の財産を相続して、1億円の相続税を納めた人がいたとします。そして、相続した財産4億円のうち、2億円の土地を売却しました。この土地は故人が過去に8000万円で購入したものだとします。本来であれば、売却代金2億円から取得費8000万円を引いた1億2000万円が譲渡所得(儲け)となり、税率20.315%をかけた約2400万円の税金を納めなければいけません。

 しかし、取得費加算の特例を使った場合、納めた相続税1億円のうち2分の1にあたる5000万円の相続税を取得費に加算することができます。結果として、2億円から取得費8000万円と加算分5000万円を引いた7000万円が譲渡所得となり、税率20.315%をかけた約1400万円まで税負担が軽くなるのです。※土地を売却したという前提で解説しましたが、不動産以外でも、相続した株式や投資信託、ゴルフ会員権や絵画などを売却した場合も同様に、この「取得費加算の特例」を使うことができます。

夫婦間で相続したら、取得費加算の特例は使えない?

 取得費加算の特例は、相続税を納めた人が相続したものを売却した場合に使える特例です。なので、相続税がかからなかった人には、この取得費加算の特例は関係ありません。

相続税がかかるのは、一定額以上の財産を残して亡くなった人だけです。

ここでよく見落とされる論点として、夫婦間の相続の場合を考えてみましょう。夫婦間の相続には、最低でも1億6000万円まで相続税を課税しない、「配偶者の税額軽減」という特例があります。この特例により、配偶者には相続税が課税されないケースが多く、結果として、配偶者は「取得費加算の特例」が使えない場合がほとんどです。

 このことを考えてみると、売却予定の相続財産はあえて子供に相続させることで「取得費加算の特例の恩恵」を最大限享受するのも1つの手です。

なお、相続した不動産を売却する場合で、相続税申告が必要になる方の場合には、相続税の申告と、所得税の確定申告が両方必要になります。

今回の記事を参考にしていただいて、不動産売却手続に取り掛かる方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、お時間等が無く、自分で手続きを実施することが難しい場合や、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。

なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。

枚方市・交野市・寝屋川市の皆さんへ、相続・遺言・遺産

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