こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。

もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。

さて、前回までの記事では自筆証書遺言の作成方法とその注意点について記載しました。

自筆証書遺言については、形式上の無効事例や、民法上は有効であっても、不動産登記の実務上、使えない遺言である事例があることを説明いたしましたが…、

実際にも、失礼ながら、死期を悟られた時期になり、急造にて作成されたと思しき自筆証書遺言である場合などは、かなり問題点の多い遺言書が残されていることが少なくありません(万全な自筆証書遺言である方が稀です)。

ここでは、どういった内容・文言で問題となるのか?

私が、今までに見てきた自筆証書遺言をもとに遺言書がNGになる事例をご紹介します。

意図としては、あえて失敗例・残念な遺言例の情報をご提供することで、ご自身が遺言書を作成される際の判断材料としていただければと思います。

目次【本記事の内容】

1.遺言書が無効、又は使えなかった文言例

この項では、遺言についての具体的な文言や文章の在り方の有効性に焦点をあてて検討していきます。

事例1 建物と土地が別々の財産であることを知らないケース

『私が所有している、大阪府枚方市枚方町1丁目23番の土地は長男○○に、大阪府枚方市枚方町4丁目56番の土地の土地は次男に、それぞれ相続させるものとする。』

日本では、法律上、土地と建物は、それぞれ個別の財産です。

土地には地番が、建物には家屋番号が付されており、それぞれが独立した不動産になっています。

この点、一般的に“家”とよばれる不動産物件が、それぞれ独立した物の権利であることを意識しないで遺言書を書いてしまうと大概失敗します。

上記のように、土地の事(又は建物)だけが遺言書にかいてあり、建物のことに何も触れられていない遺言書の事例だと、土地に関しては相続登記ができても、建物については無効で別途遺産分割協議が必要となる事例などが存在します。

また、不動産の登記は関係ないのですが、似たような事例に、銀行預金の相続で、『いつかは相続分に…。』と考えていた定期預金の口座については、遺言書に記載していたけど、すっかり“普通預金”については書くのを忘れていた…。(またはその逆)というケースもカナリ見受けられます。

事例2 『託す』と書いてはいけない

私が所有する大阪府枚方市枚方町1丁目23番の土地と、大阪府枚方市枚方町1丁目23番の建物は長男○○へ託します。○○母さんをよろしく頼んだよ。

『託す』と表現したくなるのは、気持ちの上で非常に理解できるのですが…、

法律的に、物の権利を明確無い意味で、別人に移転させる意味であったり、相続させたりするような意味を表す表現ではありません。

結果的に相続登記に使うことができませんので、こちらの表現は用いないようにしていただく必要があります。

事例3 「管理せよ」と書いてしまったケース

事例2と非常に似た形です。

当然ながら、『管理』という言語には、物の権利が対象者に移動しているという意味や、相続させるといった意味は含まれておりません。

同じく、こちらも相続登記に使うことができません。

事例4 感謝や気持ちだけしか書かれていない遺言

相続人が揉めていなければ、問題はないのですが、そもそも遺言書は財産の承継について残すものです。

自分の思いや気持ちを書きたくなる気持ちもわかりますし、それらの余地(付言事項)もあるのですが、せっかく遺言書を残すのであれば、財産のことを書かなければ意味が乏しいです。

この場合だと、せっかく家庭裁判所で検認手続きをしたとしても、相続全員で、全ての遺産について、遺産分割協議をしなければならなくなります。

2.無効な文言ではないが、対応を加える必要があった事例

この項では、遺言についての具体的な文言や文章の在り方に於いて有効ではあるものの、別途の対応策が必要とされる事例に焦点をあてて検討していきます。

事例1 住所で不動産を特定したケース

これは、前回でも紹介しました。

私が所有する大阪府枚方市枚方町1丁目2‐3の自宅は、長男〇〇へ相続させます。

遺言書において、不動産を特定する場合は、登記簿謄本に記載されている、地番(土地)と家屋番号(建物)で指定する必要がございます。

特に、もともと同じ土地からの分譲地等で隣接する複数物件が同時に販売されていたご物件である場合には、お隣の家と住居表示上、同じであるという場合もありえます。

ただし、遺言全体の解釈や、補足資料の添付などにより、法務局サイドの判断から、相続登記が受理される可能性もあります。

この点、遺言書の不動産指定が微妙だった場合などは、事前相談いただくことをお勧めいたします。

事例2 相続分の割合指定がないケース

私の自宅(大阪府枚方市枚方町1丁目2番3の土地と建物)については、長男〇〇と次男□□の二人へ相続させます。二人で仲良く使って下さい。

一応、これなら長男と次男へ相続させる意図は伝わります。

しかし、どれくらいの割合かまでは書かれていません。

結果的に、それぞれの持分をいくらの割合にするのか?兄弟で分割協議する必要が出てきます。

もしも、兄弟が2分の1の持分で良いなら、民法250条による条文上の推定により、各2分の1の持分で登記申請することによって、遺言書による相続登記ができる可能性もあります。

しかし、上記の場合で実際に申請するにしても、法務局に事前照会をしたほうが良いです。

参照:民法250条(共有持分の割合の推定)

事例3 相続ではなく、『遺贈』と書いてしまった例文

私の自宅(大阪府枚方市枚方町1丁目2番3の土地と建物)については、長男〇〇へ遺贈させます。

この場合、例え遺言の対象者が相続人であったとしても、「遺贈」と書いてしまった場合、登記上の権利移転の原因が、相続ではなく遺贈となってしまいます。

その為に、実質的に相続人ではない、第三者に不動産物件を与えた形になるため、相続人全員を登記義務者として登記申請をしなければならなくなります。

こうなると、遺産分割協議書を作成するのと同じように、相続人全員の実印押印と印鑑証明書が必要になってきます。

3.遺言書失敗事例の応用タイプ

ここでは遺言書の文言や内容そのものというよりも、その内容の実現のために、若干の工夫と工程が必要であるケースについて、紹介します。

事案を抽象化してみて、ご自身の相続に当てはまる部分があるかどうか?

検討する材料に使ってみて下さい。

事例1 予備的条項を忘れている事例

私の全財産は、妻〇〇と次女□□へ2分の1の割合で相続させる。                      次女□□よ、いつも私の介護に来てくれて、本当に嬉しく思っている、本当にありがとうな。                         
私がいなくなった後のことは、お前に任せたいと考えている。 〇〇のことも宜しく頼む。                付言事項
長女△△よ、仕事もせず、いつもお金を無心してくる貴様には、私は一切の財産を残さんからな! 〇〇と□□も、今後は△△が自立するまで一切関わりを持たないように。

長女の生活態度にあきれた父親が、中途半端に長女に財産を持たせまいと、妻と次女だけに財産を残したい気持ちで作成したものとしましょう。

内容そのものは、別にこれでいいです。

しかしながら、もし万が一妻か次女が遺言者よりも、先に亡くなってしまう懸念が残ります。

もしも、そうなってしまうとどうなるか?

その部分は法定相続に戻ってしまいますので、長女を含めて遺産分割をしなければいけなくなります。

特に、妻の年齢は遺言者と近いことも多いでしょうから、遺言者である夫よりも、妻が先に亡くなってしまうリスクが残ります。

このような事例のように、特定の推定相続人に財産を渡しなくない事情があるなら、遺言者より先に予定受遺者が死亡した場合も想定して、予備的条項まで記載することをお勧めします。

例)妻〇〇が私よりも先に亡くなってしまった場合は、私の全財産を次女□□に相続させるものとする。

妻が先に亡くなってその後に遺言者が死亡した場合、遺言者への待遇上、全く立場が違うと長女と次女が遺産分割をするとなった場合、非常に厄介なことになることが予想できます。

事例2 遺贈の場合に、遺言執行者の指定が無い事例

私の預貯金や株式、自宅、マンション等の全ての財産を、愛人A子へ遺贈します。
子供たちよ…、君たちに何も財産を残すことができず大変申し訳ないが…、なんとか私の気持ちを分かってくれ。

遺言による財産の承継先が、推定相続人ではなく、親族以外の第三者などに指定された“遺贈”を想定した場合の問題です。

この点、遺言書の本文そのものについてはさて置きます。(※愛人が遺留分減殺請求を被るなどの可能性は大いにある。)

しかし、遺贈となりますと、前項のように、不動産の名義変更の際に、相続人全員の協力が必要となってしまいます。

相続人全員が協力してくれれば問題はないとは思いますが、本文のように、これが“全財産を愛人へ遺贈したい”などと言った場合であれば、ほぼ実現が不可能であることが容易に想像できます。

事例3 不動産は私道を見落としがち

特に、例文はないのですが、ここでは、遺言書上、土地と建物についても不動産の登記簿謄本のとおり書かれており、相続登記するにも不都合が全くないケースを想定して下さい。

こんな場合でも、注意が必用です。

住宅に使用している、土地と建物以外に、前面道路の私道持分が存在していたことに気が付かないケースも往々にして存在します。

しかも、そういった私道を抜けないと公道へ出ることができない土地である場合は、私道が無くば、建物の再建築も認められないケースもあります。(※再建築不許可物件は、かなり手放すのが難しい。)

つまり、遺言書上、土地と建物を長男が取得できたとしても、私道がなければ家を建てることも土地を売ることもできない状況になってしまうのです。

このケースになると、後に発見された私道部分に関して、他の相続人全員と遺産分割協議をやってもらい、その遺産分割協議をもとに、相続登記を行うことになります。

また、さらに厄介な場合として、私道の指定を忘れ、予備的条項で、他の相続人を決めてしまっている場合なども考えられます。

そう言った遺言書である場合、他の相続人と遺産分割の話し合いをする必要が出てきます。

また、そうでない場合、一旦、私道を予備的条項の相続人に相続させて、後々相続人同士で贈与を原因としで所有権移転をする方法を検討する必要が出てきます。

どちらにしても、手続き上で苦労することに違いありません。

不動産を含む遺言を作るなら、漏れの無いように、法務局で公図調査まで行う必要があります。遺言書の作製時に専門家へご相談いただくことをお勧めします。

まとめ

今回は自筆証書遺言を作成するにあたっての、応用的な部分について、説明させていただきました。

このように、相続・遺言を解決する当事務所では、様々な状況に合わせて、相続手続きや遺言書作成について、相続手続きサポートさせていただきます。

また、相続した不動産についてお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン 

相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。

なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。

枚方市・交野市・寝屋川市の皆さんへ、相続・遺言・遺産分割のまとめ情報

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