相続人に未成年者がいる場合には特別代理人が必要

こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。

もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。

さて、今回は、相続人の中に未成年者がいる場合の相続手続の注意点を解説していきます。

不慮の事故などによって、若くしてお亡くなりになった場合や、お孫さんを養子縁組しているようなケースのご説明いたします。

目次

未成年者とは?

 成人年齢に達していない人をいいます。

近年、民法改正によって、成人年齢が引き下げられたため、2022年4月1日以降からは、18歳未満が未成年者となります。

 未成年者は、親などの法定代理人の同意を得なければ、原則として、契約などの法律行為をすることができません。身近な例として、未成年者が携帯電話を契約する際、親に同行してもらう必要があるのは、そのためです。(※しかしながら、法定成年年齢が18歳になっても、飲酒や喫煙、競馬などに関する年齢制限については、これまでと変わらず20歳なのでご注意をお願い申し上げます。)

また、未成年者が単独で行った法律行為は、取り消すこともできます。

産まれる前の胎児も相続権を有する

また、相続の場面では、産まれる前の胎児も、相続開始時(被相続人が亡くなった時)既に産まれたものとみなされ、相続権を有します(民法886条)。

これは、産まれた日が数日違うだけで、相続人となれないのであれば、不公平であるとの立法趣旨が在る為です。

遺産分割協議における、特別代理人選任の必要性

 この点、共同相続人間に、未成年者が居る場合、まず注意をしなければいけないのが、遺産分割協議の場面です。

遺産分割協議は、法律行為に該当するため、未成年者自身が参加することはできず、法定代理人である親権者が代わりに参加することになります。

しかし、〈図1〉のように、未成年者自身の親権者である母親も、未成年者と同時に相続人になるような場合には、代理人となることができません。

これは、親権者である母と未成年者である子供の間で利益相反が生じるためです。(民法826条)

利益相反行為とは?


利害が対立している関係にあることをいい、ある法律行為が、一方にとっては利益になるが、もう一方にとって不利益になる状態の事を指します。

上記の〈図1〉の場合であれば、母の取得分を減らすことにより、子供の取得分は増加させることができます。

しかし同様に、このような状態で、母が未成年者の親権者として、遺産分割協議の代理人となった場合を考えてみればどうでしょう?

自身の利益を優先して、子供の取得分をなくすことも可能となり、子供が不利益を被る危険性が生じます。

親権者が未成年者と同時に相続人となる場合に、代理人となることができないのは、このような理由が存在するからです。

 ちなみに、未成年者が相続人となるような場合であっても、親権者が同時に相続人とならない、下記の〈図2〉のようなケースには、利害が対立しないことから、親権者が代理で遺産分割協議を進めることができます。

それでは、親権者が未成年者と同時に相続人となる利益相反に該当するケースでは、どのような手続きが必要になるのか?

次の項目で解説していきます。

特別代理人の選任

親権者である親本人が、子供との間で利益相反関係にある場合には、子供のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければいけません。

特別代理人の選任が必要であるにもかかわらず、親権者のみの判断で遺産分割協議を行った場合は、その遺産分割協議の行為自体、無権代理行為として無効になります。

無権代理行為:代理人としての権利がないにもかかわらず、勝手に代理人として行った行為のことを指す。

その為、このような行為は、子供が成人した後に、「私が未成年のときに行った遺産分割協議は適法ではない!」と主張してくれば無効となり、遺産分割協議を最初からやり直すことになります。

というか、そのような無効な遺産分割協議に基づいて、遺産分割協議書を作成しても、どこの法務局も、金融機関も相手にしてくれないので、完全に意味のないものに行為になります。

特別代理人無しで手続できるか?

「別に家族で揉めてる訳でも無く、子供の取り分はアトで返すから、そんな面倒なことは、やりたくない。」

あくまで、例えば、ですが、このような理由から、特別代理人をつけずに手続をしようとする方も、確かに、一定は居られます。

しかしながら、上記のとおり、被相続人の不動産の名義変更をする際や、預金口座の凍結解除を行う場合には、遺言書、又は、遺産分割協議書が必ず求められます。

そのときに未成年者の署名押印だけでは金融機関も法務局も受理してくれません。

また、未成年ではあるものの、「既に15歳程度なので、相続のことは理解できるし、❝遺産分割協議に参加したい❞」と、子本人が自ら意志主張した場合であっても、特別代理人の選任は必要です。

 このように最終的には、未成年の相続人がいる以上、特別代理人は必ず選任しなければなりませんので、あらかじめそのつもりで行動する必要があります。

特別代理人になれる人

 特別代理人とは、遺産分割協議において、判断力が未熟である未成年者に代わって、その子供の利益を守るために立てる代理人のことをいいます。

 特別代理人となるために、特に資格は必要ありませんが、利害が対立していない相続人以外の人から選任する必要があります。

また、未成年の子が2人以上いるのであれば、それぞれ別々の特別代理人を選任する必要があります。

一般的には、成人している親族が特別代理人となるケースが多いですが、親族に候補者がいない場合には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼するケースもあります。【※専門家が就任する場合は、各事務所ごとに設定された、委任費用が発生します。】

 選任後の、特別代理人は、家庭裁判所の審判を受けた行為にのみ、代理人となることができるため、遺産分割協議が終了した時点で、特別代理人の任務は終了します。

選任の方法

 特別代理人の選任は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。申立人になれるのは、親権者もしくは利害関係者(親権者と未成年者以外の相続人など)です。

未成年者1人につき、収入印紙800円と家庭裁判所から連絡用の切手が必要になります。

必要書類

  • 特別代理人選任申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票(本籍地は任意。マイナンバーはNG)
  • 遺産分割協議書案

特別代理人選任申立書は、裁判所のホームページから入手が可能です。申立書と聞くと、記載内容が難しそうに感じますが、基本的には、当事者に関する情報を記入する事が中心なので、戸籍類の収集を含め、ここまでの難易度自体は、それほど、高くありません。

問題になるのは、遺産分割協議書案の作成です。

家庭裁判所に、遺産分割協議書案を、一緒に提出をする必要があるのですが、特別代理人を選任するとしても、原則的に、未成年者に不利な内容であれば却下されます。

仮に、却下は免れたとしても、家庭裁判所から、変更を要求される場合もあるため、結局は、法定相続分通りとするのが原則です。

しかしながら、不動産などの特定の管理や処分方法が要求される財産を、法定相続割合で登記するにはリスクがありますし、結局、法定相続割合で登記するなら、ワザワザ、家庭裁判所を通して、特別代理人を入れて遺産分割協議までするメリットがありません。

しかし、個別具体的な事情(子供がまだ幼く、成人するまで長期間に及ぶ場合など)を考え、柔軟に対応してくれるケースもありますので、未成年者にとって不利な内容になるような遺産分割協議案については、相応の理由について上申書を作成して、遺産分割協議案と一緒に家庭裁判所に提出します。

 私がこれまで実施してきたケースでも、子の年齢が幼い場合など、あるいは不動産の共有化を避ける目的であったり、子供が親の扶養下にあるため母親が資産を手にするのが子供の福祉に資すると判断された場合等で、配偶者が相続できる割合を増やして審判が出た案件があります。

選任までの流れ

 一般的な選任までの流れは、下記の通りです。

申立書を提出すると、審理が開始されます。

家庭裁判所の判断に置いて重要な点は、上記の通り、やはり、未成年者にとって不利なものではないかどうかです。

あくまでも、家裁の裁判官の診断により、審判が下されます。

 選任された場合には、「特別代理人選任審判所」が送付されます。

これは、特別代理人に選任されたことを証明する書面です。これが送付されてきたら、あらかじめ裁判所に了承を得ていた遺産分割協議書案にその他の相続人とあわせて署名・押印を行い、遺産分割協議書が完成します。

各種名義変更手続きには、特別代理人の印鑑証明書も求められますので、手続き先が多い場合は、あらかじめ多めに用意してもらいましょう。

審理完了までの期間:申立てから結果連絡まで、概ね1か月ほどかかります。申立てする家庭裁判所の混雑具合によっては、どうしても、それ以上、時間がかかることもありますので、相続税の申告期限等が心配な場合は、余裕をもって早めに手続きを開始する必要があります。

まとめ

今回は、相続人の中に未成年者がいる場合の相続手続の注意点について、まとめてみました。

ここで紹介させていただいた内容は、裁判所のホームページ:【家庭裁判所:手続案内及び各種書式】に特別代理人の選任申立てについて詳しく案内されていますので、ご自身で申立て手続きを進めることも可能です。

ただし、お時間等が無く、自分で手続きを実施することが難しい場合や、相続財産に不動産がある場合、特に、遺産分割協議書の作成について困りであれば、当事務所へのご相談をお勧めいたします。

なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。

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