こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、前回は遺産分割と遺言書に関して解説しました。
しかしながら、遺産分割協議は、相続人の全員が参加することが必須です。
他の親族に遺産分割の呼びかけをしようと思っても、しかし、家族が不仲であったり、行方不明であったりと、全員が揃うことができない場合も想定されますし、共同相続人同士で連絡が取れないケースもあるかもしれません。
ここでは、連絡がつかない、音信不通の相続人がいた場合の対応について、まとめてみましたので、遺産分割協議開始の前、相続の発生前に、気を付けるべきポイントについて、紹介していきたいと思います。
遺産分割協議が実施出来ない場合
ケース① 相手方の連絡先(住所)はわかるが、不仲で遺産分割協議に参加しない場合
この場合のように、最初から共同相続人が、遺産分割協議する意思が無い場合は、遺産分割協議ができないのが明白のため、遺産分割調停を行うしかありません。
調停の申立てをすれば、家庭裁判所裁判所から相手方に呼び出し上を送ってくれるので、自分から連絡を取る必要はありません。
調停への出席も拒み続けた場合には、調停は不成立となり、遺産分割審判に進み、裁判所が遺産分割の内容を決定することになります。
このような、家庭裁判を通じての、調停・審判については、司法書士の家庭裁判所に提出する書類を作ってもらい、自分で提出するか、弁護士に書類作成だけでなく、手続き全体の代理を依頼することが出来ます。
ケース② 相手方の連絡先(住所)がわからず、連絡が取れない場合
他の共同相続人の住所地は、その人の「戸籍の附票」を取得できれば確認することができます。
戸籍の附票には、これまでの住民票に登録された住所地の履歴が書かれていますので、現在の住所地がわかります。ただし、当然のことながら、他人の戸籍の附票は勝手には取得できません。
例えば、相手が婚姻により独立した戸籍を作っている場合でも、直係血族であれば相手の同意なく戸籍の附票が取得可能です。母であれば、子の戸籍の附票が取れますし、子であれば、逆に母の戸籍の附票を取得することが可能です。【※共同相続人が未婚の方の場合で、被相続人と同じ戸籍に入っている場合には、故人の戸籍の附票を取得することで、他の共同相続人の住所を確認することが可能です。】
一方で、他人の戸籍の附票として、簡単に取得できないケースとして、連絡がとれない共同相続人が兄弟姉妹などの関係である場合は、相手の同意なく戸籍の附票は原則として取得できません。
例えば、兄だからといって、弟や妹の戸籍の附票を勝手にとることはできない状況です。
ただし、戸籍の附票を請求する正当な理由があると認められた場合には、第三者であっても戸籍の附票を取得できることがあります。【※戸籍法第10条の2①~③】この判断は各役所が行いますので、窓口で相談してみてください。ただ、いずれの場合にしても、相手方の本籍地のある役所に申請をすることになるので、そもそも本籍地がわからなければ、この方法は使うことができません。
引用:戸籍法第10条、第10条の2①~③
第十条戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
②市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
③第一項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。
第十条の二前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
戸籍の附票によって、住所地がわかれば、まずは遺産分割協議に参加してもらうよう手紙を送り、反応がなければケース①においての、調停や審判を検討する形になります。
ケース③ 相手方が住所地におらず、完全に行方不明である場合
現住所に相手方がいない場合や、海外に住んでいるため日本に住民登録がなく、完全に行方がわからない場合には、「不在者財産管理人」を選任いただくことも検討します。
不在者財産管理人とは、行方不明になっている人の代わりに財産を管理する人のことをいい、案件とする相続事件に対して、利害関係を持たない親族、あるいは弁護士、司法書士などの専門家が選ばれます。この選任申立ての手続は、行方不明の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
そして、選任された不在者財産管理人が、家庭裁判所の許可を得ることで遺産分割協議に参加することが可能です。
ただし、不在者財産管理人については、いささかデメリットも多いです。
不在者財産管理人の選任を検討しているなら、知っておいて欲しいところです。
何故なら、この点を知らずに申立てをして、後になって後悔する人もいるからです。
- 毎月報酬が発生
- 予納金の負担
- 候補者が選ばれない
- 手続きに時間がかかる
- 不在者財産の保全
- 目的達成後も継続
また、不在者財産管理人は、基本的には行方不明者の権利を守るために、法定相続分を主張することになり、基本的には申立人とは、利益の相反する関係になります。
ケース④ 生存の可能性が低い場合
生死不明の状況が7年以上経過している場合や、災害に遭って生存の可能性が低い場合には、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。
失踪宣告が行われると、その相続人は死亡したものとして扱われるので、遺産分割協議に参加させる必要がなくなります。
ただし、その失踪者に相続人がいる場合には、代襲相続(相続する権利が、次の代の相続人に受け継がれること)が発生することにより、その次の世代の人間が、共同相続人となり遺産分割協議に参加することになります。
また、この失踪宣告の制度には、次の2種類があります。
- 普通失踪:行方不明になって7年間生死が明らかでない場合(民法第30条)
- 危難失踪:戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭遇して、その危難がやんだ1年間生死が明らかでない場合(民法第31条)
しかしながら、この失踪宣告も、申立はカナリ難しいです。
生死不明に関する7年の起算について、警察に捜索願を出した履歴が在るのか? 何時の時点から、行方不明であるのか家庭裁判に提出する資料の準備について、すぐには対応出来ないモノがあり、直面している相続事件に対して、スグには対応できない場合も多いです。
まとめ
ここまで、遺産分割協議実施困難な場合についての対応について、まとめてみましたが、そもそも論、キチンとした、適式な遺言書を用意して居ればが相続手続は一気に簡単になります。
連絡が取れない相続人がいたとしても、法的に有効な遺言書があれば、他の相続人の同意は必要なく、遺言書の通りに遺産分割を行い、銀行口座の解約や不動産の名義変更も可能だからです。
最初から、連絡のつかないご家族がいる場合は、必ず遺言書をしっかり用意しておきたいところです。
相続人と連絡がつかない場合:チャート
当事務所では相続手続きのサポートを積極的に行っております。
今回は、連絡がつかない、音信不通の相続人がいた場合の対応4選についての情報をまとめてみました。
相続開始の初期にご相談を頂ければ、相続財産の手続きに先立ちまして、対応方法の全体像をお伝えすることが可能です。
他にも、相続した不動産の売却処分(換価分割)でもお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン 相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。